名作映画2作目
2024年に観てよかった映画2作目です。
ネタバレあり!
戦場のメリークリスマス 1983年
画像引用 https://natalie.mu/eiga/film/135310
まさに知ってるけど知らない作品
メインテーマこそよく耳にするけれど、映画自体をまだ観たことがなかったので
気になっていた一本です。
内容をざっくり言うと、
日本兵と英軍捕虜とのそれぞれの友情を描いたストーリー
しかし簡単に友情と言っても、舞台は戦時中の捕虜収容所
兵士と捕虜という互いに平等とは言えない関係の中での物語です。
ストーリーの主な登場人物
日本軍人のハラ軍曹、ヨノイ大尉
英軍捕虜の中佐ロレンス、少佐セリアズ
この4人が捕虜収容所で交流そして衝突などを重ね
互いに理解、尊重していきます。
軍曹のハラは部下や特に捕虜に対して厳しい体罰や暴言を使い、
常にしばき棒を手に鬼軍曹っぷりを発揮しており
部下の不始末などに対しても、規律に則り処分(腹切り)を提言したりします。
しかしまったく考えなしの行為ではなく、処分による死を事故死ということにして
その部下の家族に恩給が下るよう計らいます。
たしかに粗暴な人物ではありますが、それなりの情も持ち合わせており
軍曹という立場故に、その粗暴さも人をまとめるのに
ある程度必要に迫られてのものだったのかもしれません。
捕虜のロレンスとは、普段から雑談を交わしているようで
ハラが軍人になった際の過去の心情を自ら語るなど、
収容所内では誰よりも気を許して話せるような関係を築いていました。
一方のロレンスは日本語も話せることから、常に通訳として日本兵に付いているので
捕虜長からジャップびいきと呼ばれますが、
捕虜の中では誰よりも日本人に理解があり、捕虜と日本兵の間をつなげようとしています。
そして大尉であるヨノイは、そのロレンスの要望などに応じ
日本軍人の中では比較的捕虜に気遣いができる人物であり
大尉として捕虜や部下に対して威厳を持ちながら収容所の規律を保っていました。
しかし、セリアズとの出会いからヨノイの心は少しずつ揺れ始めていきます。
ある出来事から、「行」を命じられ飲食を禁じられた捕虜たちに無断でまんじゅうを配ったり
または脱走未遂(命を狙われたため)を行うなど問題行動を起こすセリアズですが
どこかその行動には気高さを感じさせ、少しずつヨノイの心に触れていきます・・・
そしてまんじゅう事件と同時に、無線機の持ち込みを疑われた罪で処分が決定されたロレンス
しかし処分が下る前にそのロレンスを呼び出す人物がいました。
新犯人が見つかったことをサンタからのプレゼントとして酔って上機嫌のハラが伝えます。
メリークリスマス、ミスターロレンス!
ハラもやはり友になったロレンスの処分は避けたかったのかもしれません。
一方ヨノイは情報提供を断り続ける捕虜長に対し、捕虜全員に集合をかけさせます。
太陽の下に捕虜たちが集まりますが
まだ捕虜が全員揃っていないとして、衰弱した捕虜にも集合を強要させるヨノイ
フラフラの足で広場に向かう捕虜のシーンは痛々しく、
とても今までのヨノイが強要させていることとは思えません。
ついに衰弱した捕虜の一人が命を落としまいます。
情報提供を拒み続ける捕虜長に対し、大尉としてそれに対する答えを
部下に示す必要がある立場として、
自分が間違えているとしてもその行為を突き進めていくしかない状況の中
ある男がヨノイの前に出ていきます。
そう、セリアズです
ヨノイ大尉を止める部下はいません
そして捕虜もそれに従うしか道はなく、ヨノイの間違いに立ち向かえるのは
唯一ヨノイの心に触れたセリアズしかいなかったのです。
僕はこのシーンを観て、なぜかとても嬉しく感じ
あそこでヨノイと正面から向き合ったセリアズに感動しました。
ヨノイがこれ以上の間違いを犯すことを止められたこと、
セリアズが過去で弟にしてしまった行為への贖罪を果たせたこと、
この二つが音楽も相まって美しく描かれ、本当に素晴らしかったです。
その後、ヨノイの後任が決まり
処分が下ったセリアズは地面から首だけの生き埋め状態になってしまいます。
戦況も変化していき、ヨノイとハラも収容所から移動することになり、
ある夜ヨノイはセリアズとの別れを済ませに来ます。
最後まで気高くあったセリアズに敬意を示し、
ヨノイはセリアズの髪を少し切りとり紙に包んで敬礼し別れます。
おそらくその後セリアズは生き埋めで死亡、
そして戦犯としてヨノイも戦後に処刑され二人の物語はここで終わります。
最後はお互い命を落とす形になりましたが、
死に後れであることを気にしていたヨノイはセリアズと出会うことができ、
セリアズはヨノイを通して過去への贖罪を果たすことができたので
二人の死は悲しいことですが、
おそらく悔いを残さずその人生を終えることができたのではないかと思いました。
また、戦後同じく軍曹であったハラも戦犯として処刑が決定し最後の夜を迎えていました。
そこにロレンスが訪ねてきて面会をすることに
ハラは軍曹時代とは違い敬語、それも英語で穏やかにロレンスをもてなします。
終始穏やかにロレンスと収容所での思い出を語り合い
ロレンスもハラに助けられたあの夜のようにできることならあなたを助けたいと伝えます。
戦犯であることを受け入れてるハラは、ロレンスのその気持ちを受け取り
あのクリスマスの夜のようにこれかも酔い続けますとハラはにこやかに告げます。
ロレンスは最後に戦争に勝利したことによる苦悩をハラに打ち明け、
別れの言葉を言い部屋を後にしようとします。
ロレンス!
収容所にいたあの頃ような怒声で、ロレンスを呼び止めるハラ
メリークリスマス!
メリークリスマス、ミスターロレンス
そしてハラの笑顔で映画はエンドロールに入ります・・・
素晴らしい映画でした。
劇中で使用されるメインテーマも最高ですが
その他の音楽もシーンごとの演出をより引き出し、素晴らしい雰囲気をつくりだしていました。
坂本龍一氏の音楽が本当に素敵で、
映画の内容を知ってメインテーマを聴くと、その良さがさらに増して感じられます。
僕は2024年で4~5回はこの映画を観たのですが
折に触れまたこの映画を観ると思います。
戦場のメリークリスマスという作品の魅力にそれほど惹かれ
個人的に2024年に観た映画の中で最高クラスの作品に出会えました。